笑うな危険
最近なにかと話題の映画「帰ってきたヒトラー」を観てきた。ぜひ観て欲しいのだけど、ちょっとネタバレありで感想を書こうと思う。
ぼくは政治に疎いし、これといった思想も持ち合わせていない。でも大半の日本人なんてそんなもんだろう。政治と宗教とどこの野球チームのファンかは、話題にしてはいけないのだと昔から言われているくらいだ。
そんなぼくでも、最近のヨーロッパがきな臭い事になってるのは何となく分かる。ギリシャの破綻、移民・難民の大量流入。あげくにイギリスのEU脱退。EUに加盟している国の中で、特にドイツの負担が相当重くなって来ている...らしい。
◆コメディだけじゃない。
欧州ではタブー視されているヒトラーを題材にしているのだから、当然にブラックなジョーク(人種など)が多く、またヒトラーが現代の技術や文化に困惑するのも面白い。しかし彼はヒトラー、ちょびひげは伊達じゃない。困惑するだけで終わる男ではではない。お得意のプロパガンダをインターネットにも応用させ、あらゆる人々の関心と注目を集めていく。
最初は誰もが本物だと思わないし(当たり前だが)嘲笑し、失笑する。毛嫌いする者だっている。それでも彼は大真面目だ。本気でドイツを、「ドイツ人」を再び救おうと考えている。
◆現実と虚構が曖昧になっていく。
不思議な感覚だった。昔MGS2をプレイした時以来に久々に感じた、あの感覚。映画の流れとしてある種メタ的なシナリオである事も相まっているのだろうだろうが、まさに心が「虚構に飲み込まれていく」のだ。というのもヨーロッパの現実が笑えない状況に陥り始めているからなのだろう。
◆まとめ
ラストシーンがたまらく恐ろしい。「私が化け物だとしても、選んだのは民衆だ」その通りだった。誰だって、いつの時代だって、強くて頼れる指導者を欲するのだ。不気味な笑みを浮かべて「今こそ絶好の状況だ」とつぶやく。そしてヨーロッパの行く末を暗示するかのような実際の映像。
彼は既に、現代に帰ってきているのかもしれない。